I HATE MUSIC全曲解説

2019.05.21 23:59をもちまして

以前使っていた名前「いくらくん」をやめた。

 

やめた理由を書くのも野暮なので割愛するが

一言だけ言うと

ちゃんと俺は俺をやりたかった。というとしっくりくる。自分自身が。

 

仮の名前で音楽をしている自分に矛盾が生じたのが今年に入ってから。

新しいアルバムを作ろうと決め、そのアルバムが「I HATE MUSIC」という

なんとも俺らしいタイトルにした日から今日という日まで

いろんな葛藤があった。

 

けれど、このアルバムを作り始めた日から今日を目掛けていた。

 

サトウコウヘイと本名を出して、活動するにあたり

いくら という存在の意義を殺すという決断に至った。

 

そんなアルバムを一曲ずつ解説していこうと思います。

 

●ロングロンググッドバイ

アルバムを作るにあたり、一番最初に書いた曲。

この曲を作った時点で、いくらの存在をいつか消すことを決めていました。

音楽というものは目に見えない分 時代の流れが速い。

今日これがカッコイイと思えたものは明日ダサいと思うかもしれないほどの情報が

今、この時代には溢れている。

 

なので、この曲は。

いつも聞いてくれているファンの方に単語を募り、それを歌詞に入れるという

手法をとりました。

聞き手が作り手になる瞬間です。

 

それをすることにより。少なからず彼女ら(彼ら)はこの曲を愛してくれるのではないか。

そう思ったのです。

この主人公はそんな時代に絶望した歌うたい。

そうです。俺です。

 

いくら聞き手の自由で音楽を楽しめる時代。といえど

作り手の思いももちろんあって、やっぱり作り手は一人でも多くの人に自分の音楽を

聞いて欲しいのです。

「次のステージに行くからね。」という予知をこの時点で俺はしていました。

 

ここに歌がないことも。という歌詞

「ここ」とは「SPOON」のことです。

歌を歌として判断せず、歌をブームと判断してる人。

そんな人たちに送った歌でした。

(全部が全部じゃないよ!それは勘違いしないでね!)

 

●I HATE MUSIC feat.るい

アルバム表題曲であるこの曲。

「音楽をやっている人間への過大評価」をテーマに作りました。

タイトルは実は意外にもアニメ「トム&ジェリー」のとある話から抜粋しています。

過大評価は人間をダメにします。

「すごい!!」「感動した!!」「泣けます!!」というコメントが流れる

インターネットミュージックの現状。

 

それって本当に思ってます?

 

俺はひねくれてるから実際にライブに来てくれて、その人たちの表情以外あまり信じれないのです。

だって、現場主義で生きていた人間だから、その表情一つ一つ見たら

本当に感動してくれてるって思うから。

嬉しい言葉ももちろんたくさんあるんだけれど、それを全て鵜呑みにしてしまうと

「何をやっても俺はいいんだ」という自意識過剰へと変化してしまうのです。

全てにおいて賞賛していたらその人間がどんどん廃れていきます。

さっきも言いました。

 

時代の移り変わりです。

 

その言葉を受け取った人間は、その言葉を大切にしてします。

時代の変化によって”あなた”がその人を応援するのをやめたとしても。

 

ピアノはるいちゃん!!最高ですね!!

 

●リリーfeat.ロンドンぼうや

配信アプリSPOONでの弾き語りの王といわれた男とのコラボ曲です。

ロックンロールミュージックはもともと得意で。というか庭なので、

こういうの書かせたら上手いです。俺。

リリーという少女は田舎の生まれで、好きなバンドは彼女の地元には来ません。

リリーに片思いしている少年は彼女のためにバンドを組みます。

そして、彼女が好きなバンドの歌を彼女の前で歌うのです。

「僕のことはどう思ってもいいから、君はずっと幸せでいてね」と彼女に言います。

 

あくまで恋人になって!とは言わずに

「僕らのバンドの最初のファンになってよ!」です。

彼の最初で最期のワガママです。

自分が幸せにしたいという気持ちより先に、彼女自身が幸せになってほしいという願いの方が

彼にとっては強いのです。

 

我ながら良い男の歌を書きました。

 

その曲にふさわしかったのがロンドンぼうやでした。

ラブもピースもスマイルもライクも兼ね備えた彼にしかこの曲は歌えないと。

マジで思いました。

 

リリーがもしも彼のファンの子達だとしたら

この少年はきっとロンドンぼうやそのものでしょうね。

 

●RADIO GIRL feat.あおいささみ

深夜のラジオから流れる音楽は自分の情報を更新してくれる媒体です。

いろんな知らない音楽が流れて、夜が更けていきます。

親が寝てからがテディボーイ。すなわち悪ガキどもの時間なのです。

朝になるまでの数時間だけ。いろんな思いにふけ、いろんな知識を得る時間なのです。

先生も親も教えてくれない音楽をラジオの向こうから綺麗な声の女性だけが

教えてくれます。

 

彼はその女性に恋をします。

 

たくさんの音楽を伝え、優しく自分に笑いかけてくれる彼女に。

でも、彼は知っています。彼女は彼のことなんて知る由も無い事くらい。

 

彼はそれでもよかったのです。

この深夜から朝になるまでの時間にこそ。この時間帯の感情にこそ意味があると

彼は理解しているのです。

 

I LOVE YOUなんて届かなくても彼は幸せなのです。

 

この曲はあおいささみちゃんが一緒に歌ってくれました。

オールディーズに仕上げたこの曲ですが、真っ先に彼女の声で歌っているのが頭に浮かんできたのです。

ささみちゃんは元々R&Bシンガーですが、やはりリズムの置き方や歌い方が抜群で

SPOONで一番最初に惚れたシンガーです。

そんな彼女と作品を作れて いくらは幸せ者だなと思います。

 

●the cinema feat.てら

とある映画のお話。

自分自身を愛せない映画女優がラストカットのラブシーンで俳優を愛する演技ができなくなります。

役に全く入り込めなく、どんどん精神的に壊れていきます。

彼女は最後に俳優に首を絞めさせます。

「自分自身を愛せない私は女優として失格よ。いますぐ殺して!!!!!」

俳優も彼女の圧に翻弄され、ついに彼女の首を絞めます。

堕ちた彼女。監督は拍手をし映画が完成されます。

彼女はニッコリ笑いながら愛せなかった自分を愛することができ、亡くなります。

 

彼女は自分自身を愛するという最大の演技を遂に現実のものにしたのです。

 

一緒に歌ってくれたのは友達であり大阪の酩酊シンガーソングライターてら。

彼との出会いから俺の音楽人生はガラリと変わりました。

同い年で共通の生い立ちがあり、「お前は俺か」が合言葉な二人。

この歳になってまさか、こんなに大切な友達ができるなんて思いませんでした。

 

この曲になぜ彼を起用したかというと。

彼の叫びが聞きたかったのです。怒涛の。

そして、このアルバムで唯一「映画」を歌っているのです。

彼は映画俳優としても活躍しているので、そこもうまく掛け合いできないかと模索した結果。

こうなりました。

 

そんな彼と6月1日にライブします。ぜひ来てね!!

 

●I wanna be your “SID VICIOUS”

誰でも一度は耳にしたことのある定番中の定番フレーズのみで構成された曲。

シドヴィシャスとはセックスピストルズのベーシストで、パンクロックの象徴とまで言われている

男です。(この説明いる?)

 

ロックンロール、ブルースに乗せたポエトリーリーディングです。

 

昔、「パンクって何ですか?」と聞かれたことがある。

今の子ってパンク知らないんだって思った。

ロックンロールを知らない時代が遂に来たんだと絶望した。

 

この歌詞には数々のロックンロールバンドの名前を言っている。

1バンドずつ聞いて欲しい。

この曲に対して説明なんて・・・いらねぇだろ!!!!!!

 

そのバンドたちを聞いて、この曲を聴いたらすべて理解できる。

それがロックンロールだ。

 

●ぼくはビートルズにはなれない

俺の俺による俺のためのラブソング。

構成もビートルズと同じにしました。

オルガンを弾くポール、ギターを弾くジョン

そんな二人の再現からこの曲は始まります。

 

俺が本名で活動しようと思い、作った曲です。実は。

 

でも、その本名を出す勇気がまだなかったから

いくら名義で発表しました。

 

すごくかわいい曲です。

一人の男の挫折と悲観と憎しみ そんな汚いものから

濾過してできた音楽。

汚いものは綺麗なものの未来です。

 

初めから汚いものなんてなくて、みんな可愛くて、みんな綺麗だった。

そんなのに慣れてしまって 人は汚くなっていく。

 

俺もその一人です。

汚い俺はビートルズになんて到底なれず、

果たしてこれが音楽なのかもわからず、

それでも作り続けてサトウコウヘイが生きた証を残していくしかないのです。

 

誰かがこの曲を愛してくれるように。

誰かが俺を知ってくれるように。

 

●エンドロール

いくらくんの全てです。

いくらくんのラストソングです。

 

いくらくんというお話のエンドロール。エンディングテーマです。

 

それを意識して作りました。

 

彼は何になりたかったんだろう。

彼はどこに行きたかったんだろう。

彼は何でやめたんだろう。

 

ずっと応援します!って言ったファンがそれから二度と姿を見せなくなった

企画の時にしか顔を出さない人が俺の音楽の全てを知ったようなコメントをしてた

そんなのに嫌気がさしたんですね。

 

なので、いくらはサトウという名前を変え

音楽になることを宣言しました。

 

自分自身が生まれつけられた名前。

その名前で活動をするということ。

 

それが音楽になるということ。

 

いくらではどう頑張ってもなれなかった音楽に

サトウならなれる気がしたんです。

 

隠すものがないから。

 

多分、音楽って何かを隠したらダメで、

まっさらな状態でしか微笑んでくれないんだと思ったんです。

 

こんなに汚い俺にはそれしかなかった。

 

俺には音楽しかなかった。

そんな思いが強くなって、自分が音楽になることを考えるようになりました。

 

いくらくんの最後の曲は

サトウの始まりの合図だったんです。

 

もうこの時点で辞めることは決めてました。

 

ありがとうね。いくらくん。まぁまぁ楽しかったよ。

 

 

 

と。こんな感じでアルバム全曲解説でした。

次はサトウコウヘイとしてライブするからね。

よかったら会いに来てください。